プロセス改善による生産性向上の鍵 ~現行の運用方法に捉われすぎていませんか~
2010 年 7 月 6 日
「プロセス改善」というとトヨタ自動車等に代表されるように製造業の企業が製造工程を見直し、秒単位で無駄を排除することをイメージする方が多いかもしれませんが、コールセンターにおいても非常に重要な活動です。
コール規模は様々ですが、中には一日に何千本もの電話がかかってくるコールセンターもあり、その電話対応にかかる工数は想像以上に大きなものです。
当然、工数が多くかかればそれに比例して人件費等のコストも多くかかることになります。コストを低減するには、教育研修等によってひとりひとりの生産性を高め、適正な範囲で人件費を抑えることが重要であり、日々センターマネージャーを中心に様々な施策を通して効率化に取り組んでいると思います。しかし、センターの効率化を促進するには、現行の運用方法(業務プロセス)が非効率になっていないかを抜本的に見直すことも重要です。
今回は、コールセンターにおけるプロセスの改善によってセンター全体の生産性を向上させた事例を題材に、生産性向上のアプローチ方法を紹介したいと思います。
それではまず、事例に入る前に、「プロセス改善」で生産性向上を実現するステップについて簡単に解説したい思います。
① センターで行っている業務種別ごとにフローを作成
② (①で作成したフローの中の)各工程の作業工数を算出
③ (②で求めた数値を元に)作業工数が多くかかっている箇所を中心に、改善可能な箇所を洗い出す。
④ (③で抽出した改善可能な箇所に対して)改善策を策定し、プロセス改善を図る。
① まずは、業務の流れを「可視化」することがプロセス改善の第一歩となります。
業務の全体像・業務フローがどのような流れになっているかをコールセンターの機能ごとに可視化します。
例えば、通販のコールセンターの場合、「返品対応フロー」「配送日変更フロー」「カタログ請求フロー」等のフローが考えられます。行っている作業が多岐に渡ればフローの数は増えることになります。多いセンターでは200個以上、少なくとも10個程度必要になると思います。
② ①で作成した1つ1つのフローの中の各工程の作業件数・作業頻度、1回あたりの作業時間を調査し、その積算から各フローに費やす作業工数を求めます。
これを全て自動的・機械的に求めることは難しいため、CMSだけでは計測できない詳細の作業項目については、ストップウォッチでの計測や、時には動画で録画して計測するなど、手作業での調査も必要になります。多くの工数がかかっている箇所を見直し、改善を進めることでより大きな改善効果が期待でき、効率の良いコールセンターを作り上げることができます。
③ 次に、②で計測した情報を元に、改善ができそうな箇所を見極めていくのですが、これはコンサルタントでも経験を積んでいないとなかなか難しいポイントです。改善ができそうな箇所の一例としては、【A】(作業者が代わる等の理由で)同じ作業を複数の人が重複して行っている、【B】作業を行うタイミング等が分散しており、その都度工数が発生している、【C】ツール等が未整備なため、人によってやり方や判断基準がバラバラで工数や正確性に違いが生じている、等が挙げられます。
現行の運用方法が本当にベストなのかを、常日頃から問題意識として持っていることが大切です。
④ 最後に、最も重要である改善アプローチの選択です。例えば、③の例で出した【A】では重複作業を1回で行えるようにする、【B】では分散作業を集約して行うことで工数を削減する等の方法が考えられます。
場合によっては、手動のものをシステム化することで工数削減を図る等のアプローチを検討してもよいでしょう。
その他、同じプロセスであっても作業者を代えることでコスト削減を図ることも可能です。例えば、センターマネージャーの作業をSVに移管すること(権限委譲)によって、作業にかかっている単価を下げるといったアプローチもあります。【業務工数×コスト×アプローチ方法】を総合的に判断することで高い改善効果を得ることができるのです。
それでは、今ご説明したステップを頭に思い浮かべながらある総合通販会社A社の事例をご覧頂きたいと思います。
A社は全国の複数箇所にコールセンターを分散して運用を行っており、センター間でナレッジを共有する仕組みがないため作業の効率が悪いという課題を抱えていらっしゃいました。
例えば、ある商品に関する問い合わせがFAQに記載されていない場合、各コミュニケータ(以下CM)が各製造元へ都度問い合わせをしていました。また、情報が共有されないため、複数のセンターから同じ内容の問い合わせを行うという作業の重複が発生していました。一方、製造元でも対応に忙殺されることもありました。
解決策として、製造元への問い合わせ窓口を1つに集約し、各センターから窓口へ問い合わせを行うフローに変更しました。
製造元への問い合わせを一元管理することで、同様の問い合わせには即時回答できるようにしただけでなく、収集した情報を共有システムに公開することで各センターからの問い合わせを削減することができ、全体の作業工数の削減に成功しました。当然、お客様をお待たせする時間も短縮することができました。
これは社内外に関わる大きなプロセス改善の事例であり、大きな効果を上げることができました。

ただし、プロセス改善は1つの施策で大きな成果を得られるということは少なく、1つ1つの小さな工夫の積み重ねによって達成されるものです。
例えばこのような小さな活動もプロセス改善の1つです。
・ 電話対応を行なうCMが、お客様からの問い合わせに回答できずスーパーバイザー(以下SV)に質問する際に、挙手によりSVを呼び出す方法から、内線を利用して質問する方法に変えてSVが移動する工数を削減する。
・頻繁にプリンターを利用する役割の人の近くにプリンターを配置するようレイアウトを変更し、その人が印刷物を取りに行く工数を削減する。
1つ1つの作業を1秒でも短縮しようとする意識を日頃から持ち続けることと、期待通りの改善効果が得られなくても別のやり方で挑戦し続けることで、大きな成果を生みだすことができます。

次回のテーマは、コンタクトセンターの運用状況の成否を判断するための「KPI(Key Performance Indicator)にフォーカスします。ほとんどのコンタクトセンターでは何らかのKPI管理をしていると思いますが、企業の業種業態、企業におけるコンタクトセンターの位置づけや、考え方によってセンターで達成すべきミッションは異なるため、管理すべきKPIもセンターごとに異なるはずです。センターが本来果たすべき役割と設定しているKPIに齟齬が生じていたことによって、なかなか成果が出せなかったセンターの事例を題材に、KPIの設定に際しての考え方、ポイント等をご紹介する予定です。
皆様のセンターでお困りのことがありましたら、お気軽にご連絡ください。
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