2010 年 5 月 31 日
コールセンターの日々の円滑な運営を妨げる要因の1つに、「スタッフの退職」という問題があります。
お客様とのコミュニケーションの最前線に立つコミュニケータ(以下CM)1名の退職によりセンターのKPIの1つである応答率が達成できなかったり、他のスタッフへの負荷が高まりセンター全体のモチベーションの低下(深刻なケースでは、更なる退職を生んでしまう事態)につながってしまった経験をお持ちのセンターは少なくないのではないでしょうか。
特に、何も対策を講じないままに起こる突発的な退職は、リカバリーに要するコストも精神的な負担も大きく、センターマネジャーとしては避けたい事態です。
今回は、「退職」をテーマに、退職がもたらすコールセンターの生産性への影響と、退職抑止策についてお話したいと思います。
まず初めに、下のグラフをご覧ください。

これは、某金融業界のカスタマーサポートセンターでのCMの後処理時間(通話終了後に対話内容等をシステムに登録する時間)と、入社初月の後処理時間を基準にした月毎の改善率を示したグラフです。経験を重ねるにつれ、業務効率が向上していくことが分かります。
では、このセンターのCMの退職率が3%で抑えられている場合と10%だった場合、1年半後にセンター全体の生産性はどれくらい差がでるでしょうか。

試算上ですが、差は30%にもなります。退職率が高いセンターでは退職者を補うために新人を採用することになり、センター全体の生産性はなかなかあがりません。生産性3割の違いは運営コストに影響を及ぼすだけでなく、顧客応対レベルの違いが顧客満足度や企業のブランドイメージへも影響し、企業の競争力に大きな差をもたらします。
「退職」の影響を実感していただけましたでしょうか?
続いて、今回の本題である退職を適正の範囲に抑えていくためのポイントについて話を進めていきます。まず、退職が発生しやすいタイミングにフォーカスし、なぜ退職するのか、その理由を考察してみたいと思います。
最も退職が発生しやすいタイミングは、業務に就く前の研修中および業務に就いた直後です。研修についていけなかったり、十分な知識やスキルを習得する前に業務に就いたためにうまく業務が遂行できずに自信を無くしてしまうことが主な理由です。
コールセンターに限らず、新しい仕事をはじめたばかりのときは仕事に対する期待とともに様々な不安があるのは当然です。その不安要素が取り除かれない状態が続くとフラストレーションがたまり、結果として退職を選んでしまうことになりかねません。特に初期研修中のCMへのケアは入念に行い、不安要素をなるべく取り除いた上で業務をスタートしてもらうことが重要です。
では、具体的に何をすべきでしょうか。
まずは、研修期間中に習得状況を確認するタイミングを要所に設け、フォローアップを行なうことです。これにより、研修の進行とCMの知識・スキルの乖離を最小限に抑えることができます。
また、研修自体に問題がないか見直すことも重要です。カリキュラムに無理がないか、講師のスキルに問題はないか、研修で使用するマニュアルやツールは適切かなどについて定期的に確認します。
表:代表的なCMの不安・不満とフォロー対策
| タイミング | CMの不安・不満 | 不安の背景 | フォロー対策 |
| 採用時 | 「自分に出来る仕事かな?」 | ・業務説明が不十分で、就業のイメージがつかない。 | 就業のイメージがつかない。 ・採用前に業務の概要・特徴を伝え、就業イメージを持ちやすくする。 |
| 研修期間中 | 「難しい。」 「つまらない。」 「質問しにくい。」 |
・テキストが難解、進み方が早すぎる。 ・講師から一方通行の研修。 |
・要所で習得状況を確認し、段階的にすすめる。 ・問いかけや質問タイムなどを意識的に取り入れる。 |
「みんなと仲良くなれない。」 「誰かに話を聞いてもらいたい。」 |
・他のCMと話すきっかけがない。 ・誰に相談してよいかわからないし、話す機会がない。 |
・CM同士で話す機会を設ける。 ・講師や管理者によるヒアリングを実施。 ・日報等のツールを活用する。 |
| OJT期間中 | 「研修が難しかったから自信がない。」 「うまく出来なかったときの指導が厳しすぎる。」 |
・研修内容を未習得ままOJTに進んでいる。 ・“粗探し”のようなOJTになっている。 |
・OJTに進むまえに習得状況を確認し、基準に満たない場合はフォローアップを行なう。 ・OJTは自信をつけさせることを目的に行なう |
| 就業直後 | 「電話にでるのが(かけるのが)怖い」 「ミスしたらどうしよう」 「辞めようかな・・・」 |
・質問や相談する方法が分からない。 ・サポート体制が不十分。 ・自分自身のスキルが分かっていない。 |
・他のCMの成長を例に出すなどして、不安を払拭してもらう。 ・スキル評価などにより、得意/不得意な部分を把握してもらい、不得意部分を補うためのフォローアップを行なう。 |
そして忘れてならないのは、CMの人材要件から採用基準を設定し、採用・面接を担当するスタッフ全員で共有することです。ベルシステム24では、CMの人材要件をもとに採用基準を設定し、応募時の応対のスクリーニングにはじまり、適性検査(一般常識、知識・知能検査)、面接などを通じて判断しています。センターに求められる人材要件と合わない人を採用してしまうと、採用された方にも研修を行なう方にも負担になりますし、センター全体の採用・研修コスト、生産性に影響を及ぼします。
続いて、無事初期研修を終了し、“新人”ではなくなった後の退職抑止策について、ポイントをご紹介したいと思います。
下のグラフは、少し古い資料ですが、2003年4月号のハーバード・ビジネス・レビューに掲載された「モチベーションとは何か」という記事の中で紹介されたもので、仕事上の出来事で、極端な「不満足」「満足」を招いた要因とそれを経験した人の割合です。

(出典:2003年4月号「ハーバード・ビジネス・レビュー」)
まずは、不満足を生まないために、会社方針やセンター方針を伝え、定期的な個別ヒアリングの実施、ディスカッションの場を設定することや、給与・インセンティブ制度を明確化することなどが重要であることが分かります。その上で、スタッフ個々人に「達成」や「承認」を感じてもらう日々のマネジメントや、評価制度の明確化、表彰制度、キャリアパス制度などを整備することが求められています。
安定してセンターを運営するためには1人1人の生産性を高めていくことが重要であることは言うまでもありません。そのためには、長く勤務してもらうための環境づくりが欠かせません。
退職は必ず発生します。退職者を適正な範囲に抑え、退職の影響をリカバーする対策を講じることは、センターのパフォーマンスを最大化し、適正なコストでセンターを運営することにつながるセンターマネージャーの欠かせない職務です。

次回のテーマは、コールセンターの生産性向上の鍵となる「プロセス改善」にフォーカスします。折角1人1人の生産性を高めても、業務プロセスに問題があればその効果は限定的なものになってしまいます。コールセンターのプロセス改善により生産性を向上させた事例をまじえながらご紹介する予定です。
皆様のセンターでお困りのことがありましたら、お気軽にご連絡ください。
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お問い合わせ先:ベルシステム24 http://www.bell24.co.jp/ja/
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