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顧客インサイトの経営への反映

2010 年 3 月 19 日

コンタクトセンターの導入効果を創出するには、「オペレーショナルCRM」または「アナリティカルCRM」の段階にとどまるのではなく、「顧客インサイトの経営への反映」を実行することが重要です。
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■「ためっ放し」と「分析しっ放し」

第3回で「オペレーショナルCRM」、第4回で「アナリティカルCRM」の説明をしました。
今回は「統合CRM」の最後の要素である「顧客インサイトの経営への反映」について説明します。
「顧客インサイトの経営への反映」のあるべき姿を説明する前に、まずは散見されるよろしくない状況について説明します。
1つめは「ためっ放し」です。取り急ぎコンタクトセンターは作ったものの目先の業務をこなすことにしか手が回っていない状態です。顧客からの問合せが増えた等の事情により、突貫工事でコンタクトセンターを立ち上げただけの状態であり、「顧客インサイトの分析」など全く行われず、日々粛々とコンタクトセンター業務が行われているだけです。
2つめは、「分析しっ放し」です。この状態は、コンタクトセンターに蓄積された情報を分析します。しかし、分析した結果が経営トップに伝えられない、あるいは経営トップが分析結果に対して何もアクションをとっていない状態です。分析作業が自己目的化している状態とも言えます。
この状態を「ためっ放し」よりも1歩前進した状態と考えてよいかは疑問です。なぜならば、分析結果に対して何のアクションもとらないのであれば、最初から分析作業なんてやらない方がコストはかからないためです。分析結果に対して何のアクションもとらないシステムを購入・導入し、本番運用後も継続的に業務担当者やシステム運用担当者が時間をつかうのはどう考えてもムダです。
さらに、いざ真剣に分析結果を経営に活用しようとした場合には、分析作業はやり直しになるのが世の常です。経営に必要な情報は経営環境の変化に応じて変わり続けていくものであり、たとえその分析の枠組みが当時の経営環境に合っていたとしても、一定の時間が経過した時にそれが引き続き有効である可能性は低いためです。
「統合CRMモデル」で説明すれば、「ためっ放し」は「オペレーショナルCRM」、「分析しっ放し」は「アナリティカルCRM」の段階で終わっている状態です。

■あるべき姿

あるべき姿は簡単です。分析した顧客インサイトをきちんと経営に反映するのです。
もう少し詳しい話をしますと、顧客インサイトを反映する対象には、「戦略」、「業務プロセス」、「組織構造」、「人事」の4つがあります。
第1回で説明した顧客中心型組織の定義は「顧客インサイトを経営に反映するマネジメントサイクルが確立しており、戦略、業務プロセス、組織構造、人事の全てを顧客中心に組み立てる組織」でしたが、そこに出てくる要素と同じです。
以下、4つの要素への顧客インサイトの反映例を挙げます。
まず、「戦略」については、顧客ニーズを的確に捉えた新しい製品の開発や既存の製品の改良が考えられます。
次に、「業務プロセス」については、顧客の待ち時間を削減する等、顧客満足度を向上させるためのBPRの実行が考えられます。
また、「組織構造」については、企業側の都合によって編成されていた製品別組織を顧客属性別組織に再編することが考えられます。
最後に、「人事」については、顧客満足度が評価に反映されるような人事考課制度の整備が考えられます。
このような形で、コンタクトセンターに蓄積されたデータから顧客インサイトを分析し、その顧客インサイトを経営に反映し、具体的な行動に結びつけることが重要なのです。

■経営トップのリーダーシップ

CRMに限らず、どんな変革も経営トップのリーダーシップが重要です。
変革にはコストがつきものです。ここでいうコストとは、金額で測定できるものに限らず、自分の役割や業務が変わることに対する不安、改革反対派による抵抗、評論家的人物による批判など、組織が混乱することや雰囲気が悪くなること、あるいは個々の従業員のメンタル面への悪影響も含みます。
したがって、そのようなコストを上回る改革の意義や利益を関係者に示さないと、改革はうまく進まないのです。それなしに、経営トップが担当者に改革プロジェクトを丸投げすると、後ろ盾を持たない担当者は現場を押さえきれず、改革は高い確率で頓挫します。
しかし、その失敗の原因は、その担当者にあるのではなく、担当者に現場を説得する武器を与えない経営トップにあります。
改革プロジェクトのスタート時には、関係者全員に対して、経営トップ自らが改革の意義や利益を自分の言葉で語りかけ、何が何でもやり遂げるのだという強い意志と覚悟を表明することが極めて重要なのです。
経営トップの積極的関与によって改革をやり遂げ、新しい仕組みを作り上げることができたとしても、次の関門が待ち構えています。それは、本番運用後のできるだけ早いタイミングで改革の成果を創出することです。
過去に支払った様々な改革に伴うコストを、それらを上回るだけの成果があがったということを関係者が肌で実感できることが重要です。さもないと、せっかく作り上げた新しい仕組みの運用が定着化しない、あるいは最悪の場合は運用中止の憂き目にあってしまう危険性があります。
そのためには、新しい仕組みの本番運用の開始後できるだけ早いタイミングで、顧客インサイトを具体的な施策に落とし込んで現場の業務を変え、関係者が改革の成果を実感できるようにすることが重要です。
と同時に、多少の演出が入ったとしても、改革が成果をあげたということを積極的に社内外にアピールすることも必要です。


三浦直樹
イーシステム株式会社 常務取締役
慶應義塾大学理工学部卒。
アクセンチュアに約10年在籍後、ITベンチャー企業の取締役社長室長として同社を上場まで導く。2007年にCRMのリーディングカンパニーであるイーシステムに入社し、常務取締役として名刺管理サービス「アルテマブルー」事業の責任者とマーケティング担当役員を兼任。
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著者:@コールセンター.JP編集部

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