セールスアウトバウンドに適したトークスクリプトとは何か
さて、前回はセールスアウトバウンドトレーナーの新人育成のあるべき姿をお話させて頂いた。今回はエージェントが使うトークスクリプトの必要性と、適したスクリプトについて話してみたい。
■セールスアウトバウンドの種類とスクリプトの関係
セールスアウトバウンドには大きく分けて2種類ある。1つはB to C、つまり法人から個人へのセールス架電である。これは所謂「獲得系」というもので、インターネットの光回線導入などが多くみられる。架電先は一般家庭となるため、コール内容も定型スクリプト利用し簡略化される傾向が強く、ガチャ切りや罵倒、クレームなどへ発展するケースが多くみられる。(一般家庭の最も忙しい時間帯にコールを集中することや、電話でのセールスが胡散臭いモノとして捉われていること、トークに「読んでいる感」が出てしまう、等が原因として挙げられる)一方B to B、法人から法人へのセールス架電のセンターは「営業系」とされ、法人顧客への架電を行い、リレーションを構築するところから始める。一つの企業に対し継続したコンタクトを行い、リレーションを構築したのちにアポイントや見込案件の創出といった、実際のセールスへと繋げていく。こちらの場合相手が法人のため、ガチャ切りなどは殆ど見られない。
特徴としては、前者の場合、リストの数が多めである。大抵は2万件前後だが、案件によっては4万件以上という場合もあり、それを次から次へと架電していく。よって効率を求められるケースが多く、効率よく架電をするためにはどうしてもスクリプトに依存せざるを得ない。この場合のメリットは、トーク内容が一定にできるため、育成期間が少なくて済み、簡単な商品研修とトーク研修だけですぐに架電へと進む事が出来る。但しトーク自体がスクリプトに頼りがちになるため、金太郎飴の如く、誰もが同じトーク内容になるデメリットもある。
後者の場合、リストの数は平均300件ほどで、どんなに多くても500件程度だ。個人に割り当てられたリストは、担当が退職または入れ替えになるまでずっと抱えるため、顧客とのコンタクトは定期的に行われる。言わば、電話によるルートセールスのようなものだ。スクリプトは最初と最後の挨拶部分くらいで、あとはアドリブとなる。この場合のメリットはトークの自由度が高いことである。但し、どのようにトークを進めるかはエージェント次第となるため、トークに求められるスキル(特に営業部分)が高くなる。また、ナレッジの共有をしっかりと行わないと、AGの成績にバラツキが大きく出てしまう可能性を持っている。
このことから、セールスアウトバウンドの種類とスクリプトとの関係においては、架電効率に対してどれだけの数値目標を置いているかによって、違いが生じる。
筆者の場合、コールセンター業務経験のほとんどがセールスアウトバウンドで、そのうちの9割が法人向けであった。たまにスポットのヘルプとして、B to Cのセンターへ出向くこともあったが、思い返してみると、個人的には法人向けの方が自分の適性に合っていたと思う。決められた内容を忠実になぞるより、アドリブにより時事ネタや業界動向、果ては身の回りの出来事すらトーク内容に盛り込み、じっくりとお客様とリレーションの構築が出来るため、架電に追いかけられるよりも、架電を自ら追いかけることが出来たことがその理由だと感じている。
■セールスアウトバウンドにおけるスクリプトの必要性
同じセールスアウトバウンドとはいっても、架電先の違いによってスクリプトの必要性は異なってくる。
B to Cの場合、オープニングからクローズまでを一連の流れにしておく事で、誰に架電しても一定のトーク水準が保てる。また、お客様に提供するサービスや商品が1つであることが多いため、ヒアリング内容などもスクリプトに組み込まれる形となり、架電の効率化のためにスクリプトを用いるケースがほとんどである。
一方B to Bの場合、オープニングとクローズ程度は定型文があってもよいが、全体的には自分でトークを組み立てる必要がある。これは先にも申し上げた通り、電話によるルート営業的要素が非常に強いため、リレーション構築がアポイント取得や見込案件創出に重要なプロセスとなるので、紋切型のスクリプトではお客様との会話が続かないためである。また、1つのサービスや商品を提供するのではなく、お客様のおかれている現状をヒアリングしながら、複数のサービスや商品を「提案」しながらコンタクトを行うため、きまった形のスクリプトを用意出来ない。
これらの事を考えると、セールスアウトバウンドでのスクリプトの必要性が見えてくる。
B to Cのアウトバウンドでは、多くのリストを効率よく架電し、提供するサービスや商品の獲得率を上げてゆく必要がある。そのためには管理者サイドで予めトーク内容を組み立てておき、誰でもすぐに架電出来るような体制を作らなければ、数万件単位のリストの消化は出来ない。仮に退職者が出たとしても、教育研修機関を極力短くし、すぐに戦力としてセンターに投入して行かないと、クライアント要件が満たせない状況になってしまう。故にトーク内容を統一し、誰もが一定水準のトーク内容を話せるようにする必要がある。また、トーク内容を統一することで、CPH(コール・パー・アワー:1時間当たりの架電件数)のフォーキャストを多く見込む事ができ、より高効率の架電が可能になるため、スクリプトは必需品になる。
反対にB to Bのアウトバウンドでは、リスト数が前者の100分の1程度になるため、エージェントは同じお客様に最低でも月に1回は架電することになる。毎月お客様にお電話するのに、トーク内容が統一されたスクリプトで架電を行ったら、3回目の架電をする頃にはお客様に内容を覚えられてしまい、一切の聞く耳は持ってもらえないだろう。法人向けのアウトバウンドはルート営業と同様である事は前述したが、それ故にお客様とのリレーション構築と向上が必須となる。そのためにはエージェントが常に新鮮な情報を入手し、お客様との過去のコンタクト履歴を見返しながら、都度でトーク内容を考える必要がある。つまり、1回のコンタクトに「一期一会」の精神が求められるため、同じ内容の繰り返しが通用しない。よって法人向けアウトバウンドに求められるのは必ずしもトークスクリプト、ということではなく、トークの創造力が高いエージェントになる。(B to Bセールスアウトバウンドコールセンターのエージェント育成についてのコラムは、第4回「セールスアウトバウンドTrainerによる新人育成のあるべき姿」をご一読頂きたい)
同じアウトバウンドでも、コールの性質が違うことで働く人材が変わり、スクリプトの必要性にも大きな違いが出てくる。アウトバウンドコールセンターで働く管理者層は、自分たちのセンターに合わせてスクリプトの作成に着手するべきであろう。
■セールスアウトバウンドに適したスクリプトとは何か?
私の経験した中で、トレーナーが作成したスクリプトを丸読みさせているセールスアウトのセンターでは、B to CであれB to Bであれ数字が上がっているところは少ない。逆に最初はトレーナーが作成したスクリプトから始め、エージェントが成長してゆく中で独自に使っている言い回しやキメ文句などを自由に書き込ませ、「マイスクリプト」を作らせるようなセンターはコールの品質、数、獲得数など良い結果が出ているようだ。やはり、スクリプトに自らの言葉を使うことで、その言葉に対する責任も発生するし、何より、案件が成立した場合、人の言葉で成立するよりも自分の言葉の方が成功実感率が格段に違う。
また自ら言葉を創造することで、その言葉を創造するための知識を深めようとする、という別の効果も生み出す。つまり、お客様とコミュニケーションを継続的に行う上での商品知識を深め、より高い次元でのコミュニケーションを実践する手助けとなるのである。
上記のことから、実際の現場にてスクリプトを作成する場合、以下のようなスクリプトが適していると考えられる。
・B to Cセールスアウトバウンドコールセンター
先ずはセンター側(トレーナー、SV、リーダー)が作成した定型スクリプトを用意し、研修期間及び着座後数週間は徹底的に既成スクリプトで架電してもらい、その後に基本白紙のスクリプト(但し、幾つかの必要定型部分(オープニング、クロージング部分やその他必要な個所)は記載してあるもの)を渡す。そこに自分なりの言い回しや伝え方などを記載させ、「マイスクリプト」を作らせる。このエージェント達が作成した「マイスクリプト」は、トレーナーなどの管理者層がコピーを取り、エージェントの実力を分析する資料にもなる。機会があれば活用してもらいたい。
・B to Bセールスアウトバウンドコールセンター
トークスクリプトとして渡すのは、オープニングとクロージングで必要な定型文のみ。その他は全て白紙。但し、「何故電話の仕事なのにスクリプトが無いのか?」というエージェントの疑問を解決するため、その主旨を正確に伝え、納得感を持たせる必要がある。その上で、初コンタクトでのご挨拶、受付突破、担当部署でのトーク、キーパーソンの見つけ方など、セールスアウトバウンドにおける様々なシチュエーションでのトークのコツを徹底指導する。その後、渡した白紙スクリプトにそれぞれのスクリプトを書かせ、それを個人の基本スクリプトにさせる。
上記のような形態のスクリプトは、適切な展開とAGの意見や希望を取り入れることで、センター内に活気をもたらし、AG同士の情報交換の機会を増やす。結果、自然にスクリプトはブラッシュアップされ、それが継続することでトーク品質も、数も強いセンターが構築される。トレーナーはスクリプトを作成する際、自分のセンターが個人と法人どちらが対象であるかを考慮し、そのコール主旨に合ったスクリプトを作成すると良いだろう。
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井口大輔 1973年東京生まれ。 セールスコミュニケーション、チームコミュニケーションなど、営業を主体としたコミュニケーション研修を得意とする。18歳から6年に渡る留学生活を活かし、帰国後は販売業、営業などを経験。法人向けセールスアウトバウンドでは、セールスプライズを受賞。その後そのコミュニケーション力を認められ、大手テレマエージェンシーにて、セールスアウトバウンドトレーナーに従事… 詳細はこちらから 【最新の記事】 [2010.02.26]セールスアウトバウンドに適したトークスクリプトとは何か? [2010.01.28]セールスアウトバウンド(※)Trainerによる新人育成のあるべき姿 [2010.01.07]新入社員に必要な“ビジネスにおけるコミュニケーション研修” |
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