セールスアウトバウンド-Trainerによる新人育成のあるべき姿
2010 年 1 月 28 日
■セールスアウトバウンド(※)Trainerによる新人育成のあるべき姿
(※)セールスアウトバウンドとは、顧客リストを元にコールセンター側から電話をして、調査を行ったり、プレゼンテーションのためのアポイントをとるなどの販促活動を行う業務。 セールスアウトバウンドは主にB to BやB to Cがある。
★営業を主体とし、センター側から顧客へ発信をし、コミュニケーションを取りながら売上(販売)に繋げてゆくコールセンター業務を「セールスアウトバウンド」と言う。クライアントとのSLA(サービス・レベル・アグリーメント)がアポイント取得件数や案件創出件数であったりするため、結果が数字に如実に表れ、他のエージェントとの差がハッキリと見えてしまうがゆえに、エージェントが潰れやすく、人材が育たないという話を良く聞く。そのためエージェントの育成に頭を悩ませているセンターも多い。
セールスアウトバウンドのコールセンターでトレーナーとなる人材は、エージェントの心の機微を捉え、適切な育成をする必要があるが、トレーナーはどの様な心構えで育成にあたるべきなのだろうか?今回から3回に渡り、セールスアウトバウンド・トレーナーにあるべき姿について書いてみたい。
■セールスアウトバウンド・トレーナーが陥る罠
セールスアウトバウンドのトレーナーとなる人材は、大抵がそのセンターで長期に渡り安定した売り上げ(アポイント、見込案件)を出してきたエージェントが就任する事が多い。しかし実際にトレーナーとして新人の指導育成にあたると、思ったように人材が育たず、研修期間の間に大半が離職してしまうというのもよく聞かれる話だ。その原因は一体どこにあるのだろうか?トレーナーは自分が出来ていた事を中心にカリキュラムを作る。つまり自分の成功体験を基として指導育成にあたる。実はここに大きな罠が仕掛けられている。
トレーナーが作成するカリキュラムはトレーナーがエージェント時代に成功した事例を中心に組み立てるため、どうしても主観になりがちだ。実はココが罠なのだ。話の運び方や案件の温め方、アポイントへの持っていき方など、「トレーナーの成功体験」をそのままアウトプットするため、ともすればイケイケな研修内容になってしまい、新人エージェントは「最初からこの通りにやらなければいけないんだ」と不安に陥ってしまう。実際はトレーナー自身も最初から出来ていたわけではなく、時間を掛けて、自分なりのノウハウを積み上げてきたにも関わらず、だ。
このような形でエージェントが不安感を持ってしまうと、ここからのリカバリーは容易ではないということは、想像に難くないだろう。
もちろん、トレーナーが自らの成功体験を踏まえたテキストの作成や指導をすることは必要であるが、それが全てであるという事はない。トレーナーは、新人の指導育成にあたる際、まずは一度、自分自身が新人だった頃を思い出し、自分がアポイントや見込案件を創出するにあたり、どのような事から着手したのか、どのような苦労があったのかを思い出し、その上で新人がアウトバウンドコールに必要な基本部分(例えば製品知識、基本トーク、セールスアウトバウンドの歴史、営業トーク・・・等)を教育すると良い。
特に新人は何につけてもナーバスになりがちだ。トレーナーはその緊張を解す意味でも、自分が最初の頃に失敗した時の話などを研修内容に盛り込み、「誰でも最初は上手くいかないものなのだ」という事を教える必要がある。
私が以前、セールスアウトバウンドセンターでトレーナー職に従事していた時、新人に対して話していたエピソードの一つで、「ひしゃく事件」というものがある。これは、とある外回りの営業職に就いていた時、「銀座の飲食店全てに、Web広告のパンフレットを渡してくる」というものがあった。全ての飲食店というからには当然、バーや居酒屋、果ては立ち食いソバ屋にも渡さなければならない。
ある時、私が飛び込んだ立ち食いソバ屋で、いつものようにパンフレットを渡そうとした時、店の主人から「こんな立ち食いソバ屋がWeb広告なんて載せると思ってんのか!!」と物凄い剣幕で怒鳴られ、ひしゃくを持った店の主人に数百メートル追いかけられた事があった。結構大きく、長いひしゃくだったので、「あれで引っ叩かれては敵わん」と全速力で逃げた覚えがある。
新人研修でこのエピソードを話すと、エージェントの気持ちは一気に和み、アウトバウンドに対する不安や、最初から数字を狙わなければならない、といった新人特有の強迫観念を取り除くことが出来る。なぜなら、「最初はだれでも失敗するのだ」という実体験をトレーナー自らの体験談で伝える事が出来るからだ。そしてこのタイミングで業務に対する興味付けを行う事で、エージェントの研修に対する姿勢や研修内容の腹への落ち方が違ってくる。
したがってトレーナーは自らの成功体験よりも、自身の新人時代を研修初期に盛り込み、新人の緊張や不安を解きほぐすことから始めると良い。
■新人は百人百様
センターに配属される新人たちは性別はもちろん、個々の性格やバックグランドまで百人百様だ。多くのトレーナーはそれを忘れ、「この通りにやればいい」としてしまっているケースがよく見られる。しかしセールスにおいて「王道」はあるが「絶対」はない。それはアウトバウンドセールスでも同じことだ。セールスの指導育成を行うにしても、個々の特性をある程度見分け、アポイント系や見込創出系などに分けた指導を行うべきである。
一般的に新人はアウトバウンド自体に不安を持っている事が多くある。面接において、「このコールセンターは発信をするセンターである」旨を説明していても、新人は漠然としたイメージしか持っておらず、実際にセンターに配属され、先輩エージェントが架電している姿を見た瞬間に「しまった・・・」と思うことも少なくない。
故にトレーナーは、「新人は全てナーバスな心理状態にある」と仮定したうえで、エージェントと接するべきである。トレーナーを含めた管理者層は、元気がよく、溌剌としたエージェントが配属されるとつい、期待をしてしまうものである。しかし新人は実はカラ元気でいるかもしれない。反対に比較的おとなしい印象の新人が、実は高いポテンシャルを秘めているかもしれない。つまり、配属された直後では、新人たちの本当の姿は見えてこないということだ。
当然、センターとしては数字を出さなければならないため、少しでも早く架電を行い、センターに貢献して欲しいというのが本音であろう。しかし、本当に新人をエージェントとして育てたいのであれば、研修初期段階で各人のキャラクターを把握出来るようなカリキュラムを組みこんで欲しい。
実際に筆者がトレーナーを務めていた際は、研修初日は一切の座学研修を行わず、ディスカッションやグループワークなどのオリエンテーションのみに時間を割いた。これにより各新人の以下の能力が見えてくる。
・コミュニケーション能力
・与えられた課題(ミッション)に対する理解度
・与えられた課題(ミッション)に対する実行力
・リーダーシップ
・チームワーク(仲間意識)
・論理的思考力
・性格のタイプ
トレーナーは各新人の能力を判断し、まずは基礎的な座学研修を始める。その後、トライアルの架電を行わせ(まずはトレーナー自らがお手本となり、数本のコールを実施し、それをモニタリングさせる)、それぞれのコールの特徴を把握し、それぞれの最も良い部分から伸ばしてゆけば良いのである。
「研修にそこまで時間はかけられない」という声が多く上がりそうだが、頻繁にエージェントが退職してしまうセンターでは人が育たないばかりでなく、ナレッジも蓄積されない。それではクライアントからの要件を満たすどころか、センターの解散という事態にもなりかねない。
新人の特徴を捉え、適切な指導育成を行うことが、最終的にセンターの存在価値を高める事に繋がるのである。
■トレーナーに求められるマインド
セールスアウトバウンドは「決まった内容を話していれば良い」、というマニュアルライクなものではなく、エージェント一人ひとりの自主性や個性が毎コールに現れる仕事だ。そのエージェントを育成するトレーナーに求められるマインドは、「クライアント要件を満たすエージェントを育てる」事ではなく、「どこのセールスアウトバウンドセンターに配属されても、商品研修を受けるだけですぐに結果が出せるエージェントを育てる」事だ。すなわちそれは、「コミュニケーション能力が高いエージェントを育成する事」であり、いくら緻密なカリキュラムが組まれていても、トレーナーのマインドが単に発信件数や受注率のみにあり、コミュニケーション能力の開発に対する意識が低ければ、数字追いのみしか出来ないエージェントにしか育たない。
トレーナーは、エージェントが常日頃からコミュニケーションが取りやすいポジションにいる必要がある。つまり「近く、頼れる存在」でいるべきだ。
特に新人の場合、現場にも業務にも不慣れな状態で、毎日、緊張と戦っている。このような状態のエージェントと接する場合、トレーナーから能動的に声を掛けてゆき、「常に見ているよ」というメッセージを送る。実際の悩みの解決には至らなくとも、打ち明けられる存在が近くにいるだけで、エージェントは気力を回復するのだ。
単純に思えるが、このような事を根気よく、繰り返し行ってゆくことで、自然と新人同士でのコミュニケーションが活発になり、周りの先輩エージェント達もそれに触発されて、声を掛け始める。これは一見すると能力開発に思えないかもしれないが、セールスアウトバウンドにおいて、最も重要な能力は、コミュニケーション能力であるため、日頃からセンター内でのコミュニケーションが頻繁に行われているセンターは、実際のコールでもお客様とよいコミュニケーションが取れている。
そしてそれを促すように仕向けてゆくことで、新人エージェントのみならず、先輩エージェントのコミュニケーション能力の開発になってゆくのである。
トレーナーは日頃から、自らが率先して周りとコミュニケーションを取ってゆく積極性がなければ務まらない。この意識が低いまたは持ち合わせていない人は、セールスアウトバウンドのトレーナーは向かないだろう。
トレーナーとは、センター全体の人材育成の要であり、センター内のコミュニケーションのハブである。これがトレーナーに求められるマインドであり、このマインドこそが、トレーナーをトレーナーたらしめるものなのである。
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井口大輔 1973年東京生まれ。 セールスコミュニケーション、チームコミュニケーションなど、営業を主体としたコミュニケーション研修を得意とする。18歳から6年に渡る留学生活を活かし、帰国後は販売業、営業などを経験。法人向けセールスアウトバウンドでは、セールスプライズを受賞。その後そのコミュニケーション力を認められ、大手テレマエージェンシーにて、セールスアウトバウンドトレーナーに従事… 詳細はこちらから 【最新の記事】 [2011.07.04] [2011.06.20] [2011.06.13] |












