2010 年 8 月 31 日
今回は、コールセンターの特長として語られるようになって久しい「VOC(Voice Of Customer:お客様の声)の活用」をテーマに取り上げたいと思います。
一般的に「VOCの活用」とは、様々な手法を利用して集めたお客様の声(VOC)を分析し、課題の発見や改善(商品開発、品質管理、営業強化、カスタマーサポート等)に活かす取組みのことを指します。VOCについてコールセンターが注目されている理由は、コールセンターがお客様とダイレクトなコミュニケーションを取ることができ、情報を蓄積しやすい環境であるという特長にあります。
コールセンターにおけるVOC活用の取組みは1990年代後半から始まりました。1997年に国内で初めてテキストマイニングツールが発売され、2002年頃からコールセンターにテキストマイニングツールの導入が進み、当社も2002年に国内のテレマーケティング業界で初めて導入しました。リスクマネジメントやFAQの構築を目的に活用されはじめ、昨今では企業のマーケティング全般や経営にまで活用の範囲が広がっています。近年ではコールセンターに蓄積した情報を活用している企業が雑誌等で取り上げられる機会も増えており、企業の重要な改善活動を担っています。
その一方で、VOCを蓄積していない(できない)、蓄積はしているけど情報の精度が低く活用できない、人員不足で分析・活用まで手が回らない、社内共有の仕組みがない等、VOCの活用が進んでいないコールセンターが多いのも事実です。
VOCの活用が進まない背景には、蓄積するデータベースやテキストマイニングツールがない、分析できるスタッフがいない、コールセンター部門は効率化が最優先でVOC活動は求められていない(必要性を感じていない)といった理由があるようです。
しかし、1コールあたりの処理効率を維持しながらVOCを残し、特別なツールを使用せずに改善活動を実践しているコールセンターもたくさんあります。今回は2つの事例をご紹介しますので、是非参考にしていただきたいと思います。
まず1つ目は、基礎化粧品の通信販売のアウトバウンドセンターの事例です。
このコールセンターでは、サンプル商品をご購入いただいたお客様へアウトバウンドをして、本商品購入を促進していましたが、成果は低調でした。しかも、本商品を購入したお客様と購入しなかったお客様とで何が違うのか、理由は何なのかが明確でなく、どこから改善に着手すべきが分かりませんでした。
成果向上のため、ベルシステム24は、まずはお客様を知ることからスタートしました。お客様の課題(購入動機)を把握し、商品の継続的な利用や使用方法のアドバイスを通して課題解決を図ることが継続購入につながると考え、コールセンターでお客様の声を収集し、仮説をたてて検証するというサイクルを数回繰り返した結果、お客様の商品に対する期待と広告メッセージとの間のズレを発見し、具体的な改善ステップに進むことができました。
このVOC活用の取組みに際して注意したことは、受注効率を維持させることでした。お客様との通話や後処理時間が長引くことは呼損の原因となり、ダイレクトに販売機会の損失につながるためです。
お客様との対話の中で必要な情報を自然に収集し、スムーズに記録に残すために、ベルシステム24のコンサルタントが導入したのは、1枚の用紙と鉛筆でした。選択式にできる項目については○をつけるのみとし、お客様の購入動機につながるお肌の悩みを記録するには顔の絵の上に書き込めるよう工夫し、1枚1枚がお客様のカルテになるようなものでした。集めた数百枚のカルテと購買データをあわせて分析することを繰り返し、課題を明確にすることができました。
この事例のように、全てをデータベースに蓄積しなくても、オペレーションを工夫することでVOCの活用が可能になります。難しく考えすぎず、身近なところから取り組んでみてはいかがでしょうか。

2つ目の事例は、ある有料サービスの申し込み受付センターの事例です。このセンターでは新サービスのリリースに伴い、新サービスに関するお問い合わせ・申込受付と、旧サービスから新サービスへの切り替えの受付を行っていました。しかし、新サービスの申込者数が目標値を下回る状況が続き、コールセンターでも申込者数を増やすための支援策を検討していました。
コールセンターは、広告や販促物をご覧になったお客様が、より詳しい内容を聞き、不安や疑問を解消し、申込みを行う場であり、これまでお客様が接してきた広告やプロモーションに関するご意見を聞くことができる貴重な機会でもあります。
ベルシステム24は、このようなコールセンターの特長を利用し、お客様が不安に感じている事柄や、多く寄せられる質問を分析し、広告や販促物での旧サービスとの違いや料金などの表現方法の修正を提案しました。
また、入電が少ない時間帯に、申込者へ電話によるアンケートを実施しました。新サービスの利用状況や感想、申込み理由や満足度などを聴取し、キャンペーンや店頭での販促方法の提案も行いました。通常、調査会社等に委託するような調査がコールセンターを活用することでスピーディに実施できました。
このコールセンターの場合は、コールセンターの運用体制やお客様の情報を蓄積するシステムは整っていましたので、別途VOC活用のための体制として、モニタリング担当とデータ分析担当を確保することで、コールセンターの品質や生産性を落とすことなく有効なVOC情報を全社に伝えることができました。
参考になりましたでしょうか?
VOCの活用にあたって、形式やしくみにこだわる必要はありません。しかし、VOC活用の成功に欠かせないものであり、同時に見落とされがちな2つの重要なポイントがありますので順にご説明していきたいと思います。
1つめは、VOCとして蓄積された情報が「本当にお客様の本音なのか」ということです。
以下の3つの前提条件がそろっていないVOCは、どんなにすばらしい分析者が最新のツールを駆使して分析しても有効な結論は導き出せません。
①コミュニケータ(以下CM)がお客様の言葉に反応できるアンテナを持っていること
②CMが高いコミュニケーション能力でお客様の本音を引きだしていること
③CMがお客様との対話を正しく記録に残せること
実際に通販のセールスアウトバウンド業務をモニタリングすると、商品の使用状況などをヒアリングした後、ほとんどのケースで1分以内にはお決まりのセールストークに入ってしまいます。このような表面的な対話では、お客様の課題やお客様が求めている本音を引き出すことは難しいでしょう。
2つめのポイントは、運用体制とは別にVOC活用のための体制を用意することです。コールセンターを運用していくための一般的な機能(センターマネージャー機能、SV機能等)とVOCを活用して成果を向上させるための機能(データ分析機能、スクリプトライター機能等)を切り分け、それぞれの役割に専門性を持たせることで効果があがりやすくなります。日常的にこのような体制を確保することは厳しいかもしれませんが、成果を挙げるコールセンターを目指すには、一時的に外部のリソースを活用することも含め、このような機能拡張を図ることも一考の余地があると思います。

是非、貴社コールセンター独自のVOC活用に取り組んでいただき、貴社コールセンターが企業の様々な改善活動を担えるよう様々な工夫をしていただきたいと思います。

最後になりますが、今回を持って連載は終了となります。
日々コールセンターをマネジメントされる皆様にとって、少しでもセンター運営についてのヒントになれば幸甚です。
コールセンターの運営は一朝一夕で劇的に改善されることはありません。センターをマネジメントされる皆様が、起きている事象を的確に把握し、体系的に1つ1つの課題解決を図ることでしか目指しているコールセンター像に近づけることができません。お客様とダイレクトにコミュニケーションを取れる強みを活かし、是非新しいコールセンターの可能性を模索してください。もし、貴社センターの個別の事案・課題について、ご相談・ご要望等ございましたらベルシステム24までご連絡いただければと思います。
最後までお読みいただいた皆様、長い間ご愛読いただきましてありがとうございました。











